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平成18年4月25日(火) 毎日新聞の記事より

読み継がれる「千の風になって」
いのちとは、永遠に不滅
作家・新井満さんが遺族にメッセージ

 米同時多発テロ(01年9月)の遺族が朗読した英文詩「死と再生の詩」を日本語に意訳し、
写真詩集「千の風になって」を出版したり、作曲して歌った芥川賞作家、新井満さん(59)が、
最愛の人を失って1年となる尼崎脱線事故遺族にメッセージを送った。「千の風になって」は、
悲しみを癒す詩集として遺族の間で読み継がれており、25日の追悼行事でも紹介される。
列車事故でたくさんのいのちが失われてから、1年が過ぎました。大切な人を失って悲しみの
どん底に突き落とされたご遺族の方々に、語りかける言葉を私は知りません。私にできることが
もしあるとするならば、それは皆さんと手を取り合って、共に涙を流し泣くということだけです。
しかしご遺族の方々の中には、こんなコメントを寄せられた方々もいたそうです。
「新井さんの『千の風になって』を毎日のように聴いています。あの歌によって悲しみがどれ
ほど癒やされたことでしょう・・・・・・・」
新聞報道によってそのことを知った時、身のひきしまる思いがしました。実は、あの歌は私の
オリジナルではないのです。原作は英語詩で、しかも作者不詳なのです。この詩に感動した私は、
ただそれを日本語に翻訳し作曲し歌っただけなのです。それにしても不思議な歌だと思います。
なぜならばあの歌には“死者からのメッセージ”が込められているからです。
「死とは一巻の終わりではない。風や光や鳥や星に生まれ変わることなのだ。だからいのちと
は、永遠に不滅なのだ・・・・・・・」
もしかするとこのメッセージが、喪失の悲しみを癒やし、私たちに生きる勇気と希望を与えて
くれるのかもしれません。
私にも悲しみの記憶があります。私は幼いころ、父親を医療事故で亡くしました。父親は死な
なくてもよかったのに、殺されてしまったのです。まだあります。私は新潟地震に遭遇し被害者
となりました。奇跡的にけがひとつしませんでしたが、わずか半日で一生分の恐怖を味わいました。
その時に受けた心の傷はトラウマとなり悪夢となって、今も私を苦しめるのです。
生きるということは、悲しいことですね。おそらく私たちは一生、さまざまな悲しみを背負って
生きてゆくのでしょう。共に涙を流し励まし合うことによって、この悲しみがほんの少しでも軽く
なれば良いと思います。思い切り泣いたその後で、考えましょう。後に残された私たちに、いった
い何ができるのか?
何をすべきなのか?昔、フランスのある画家がこんなことを言いました。

死者を
死せりを思うな
生者いるかぎり
死者は 生けり

 大切なあの人は逝ってしまった。けれど、あの人のことを忘れずに想いつづけるかぎり、あの
人は決して死なない。私たちの心の中でいつまでも行きつづける・・・・・・・。
そう信じたいと思います。

 

千の風になって

 

私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に
千の風になって
あの大きな空を
吹きわたっています

秋には光になって 畑にふりそそぐ
冬はダイヤのように きらめく雪になる
朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
夜は星になって あなたを見守る

私のお墓の前で泣かないでください
そこに私はいません 死んでなんかいません
千の風に
千の風になって
あの大きな空を
吹きわたっています

千の風に
千の風になって
あの大きな空を
吹きわたっています

あの大きな空を
吹きわたっています


「千の風になって」は、いかにして生まれたか?     By新井満

私のふるさとは新潟市です。この町で弁護士をしている川上耕君は、私のおさななじみです。
彼の家には奥さんの佳子さんと三人の子供たちがいて、とても明るく幸せな家族生活を営んでいました。。
ところがある日、佳子さんはガンにかかり、あっというまになくなってしまいました。
後に残された川上君と子供たち三人のおどろきと悲しみは尋常ではありません。絶望のどん底に蹴
落とされたのも同然です。なぐさめの言葉を言う以外、私にできることはありませんでした。
しかし、そんなものが何の役に立つはずもありません。

佳子さんは地域に足をつけた地道な社会貢献活動を行う人でもありました。
たくさんの仲間たちが協力して追悼文集を出すことになりました。
「千の風になって‐川上佳子さんに寄せ‐」という文集です。
文集の中で、ある人が「千の風」の翻訳詩を紹介していました。私は一読して心底から感動しました。
<よし、これを歌にしてみよう。そうすれば、川上君や子供たちや、あとに残された多くの仲間た
ちの心をほんの少しくらいはいやすことができるのではなかろうか.......>そう思ったのです。

何ヶ月もかけて原詩となる英語詩をさがし出しました。それを翻訳して私流の日本語訳詩を作りました。
それに曲をつけて歌唱したのが、この度の「千の風になって」という歌です。
私家版のCDを数枚だけプレスし、そのうちの一枚を川上君のところに送りました。
CDは佳子さんを偲ぶ会で披露されました。集まった人々は一様に涙を禁じ得なかったそうです。
そして泣きながらこの歌を歌ってくれたのだそうです。


 

 

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